“壊すことで大きくする”革新的なタンパク質結晶育成法を開発 ~様々なタンパク質の機能解明に期待~(大学院理工学研究科 吉川洋史 准教授 共同研究)
2016/10/25
埼玉大学 吉川洋史准教授、大阪大学 丸山美帆子元特任助教(現京都府立大学特任講師および北海道大学低温科学研究所研究員)、森勇介教授、横浜市立大学 橘勝教授、東北大学金属材料研究所 小泉晴比古助教、株式会社創晶らの共同研究グループは、レーザーによる破壊プロセスを用いた、大型タンパク質結晶育成の革新的技術を開発しました。
本研究成果は、「Nature Photonics」誌のオンライン速報版で2016年10月24日(英国時間)に掲載されました。(英国時間10月24日16時:日本時間10月25日0時オンライン)
研究成果のポイント
1.レーザーによって結晶を局所的に壊すことで結晶を大きくするという、従来法とは根本的に異なる革新的なタンパク質結晶育成法を開発した。
2.本研究成果は、タンパク質の大型結晶作製とそれを利用したタンパク質分子構造の解明に貢献し、様々な生命現象のメカニズム解明に繋がることが期待できる。
タンパク質は様々な生命現象を支える重要な物質であり、タンパク質の分子構造はその機能を調べる上で必要不可欠な情報です。一般的に、タンパク質の分子構造を知るためには、まず大きい単結晶(数十ミクロン以上)を作製し、X線や中性子線により解析します。しかし、タンパク質は結晶成長の駆動力が弱く、分子構造の解析に必要な大きさの結晶を得ることが難しいケースが多々あります。
共同研究グループは、フェムト秒レーザーアブレーションという光誘起現象により、タンパク質の結晶面の一部を破壊すると、その結晶面の成長が数倍以上加速するという新奇な現象を発見しました。興味深いことに、レーザー破壊箇所を含む、成長した結晶のX線回折パターンを測定したところ、結晶品質の劣化は認められませんでした。さらに、この新奇な結晶成長現象のメカニズムを光学顕微法やX線トポグラフ法により調べた結果、レーザーによって破壊された箇所から、結晶成長の駆動力が大きい渦巻き状の成長様式(成長モード)が発生することを明らかにしました。このように能動的且つ時空間的にタンパク質結晶の成長モードを制御した例はこれまでになく、これらの結果は、本手法が大型タンパク質結晶作製におけるブレークスルーとなり得ることを示しています。
本研究成果により、今後、開発した手法が種々のタンパク質の大型単結晶の作製に応用され、様々な生命現象のメカニズム解明に役立つことが期待されます。
レーザーによるタンパク質(ニワトリ卵白リゾチーム)の結晶成長の促進。
結晶がレーザーを照射した面の方向に大きく成長しているのがわかる。
詳しい研究内容について
“壊すことで大きくする”革新的なタンパク質結晶育成法を開発~様々なタンパク質の機能解明に期待~(プレスリリース)
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