◆埼玉大学創立70周年記念事業◆ 第1回リベラル?アーツ研究セミナーを開催-「ホームレス支援と都市空間:大阪の事例から」
2019/5/31
5月17日(金)、教養学部においてリベラル?アーツ研究セミナーが開催されました。
第1回目となる今回は、「ホームレス支援と都市空間:大阪の事例から」と題し、本年度より着任したヨハネス?キーナー准教授が登壇しました。
まずキーナー准教授は、2019年4月のあいりん総合センターの閉鎖を、大阪市におけるホームレス支援による空間的な再編成の一環として分析しました。戦後、日本では日雇労働者が居宅保護から排除され、1960年代からは国家と大阪府?市の介入によって、あいりん地区という特定の空間内に、住所不定者を対象にした特別な福祉制度が整備されてきました。その結果として、被保護世帯は大阪市内の1ヶ所に集中することとなり、1990年にあいりん地区が位置している西成区は8%と、最高の割合を示しました。
しかし、1990年代後半からホームレスや派遣切りなどの新しい社会問題が登場し、生活保護も適正化されてきました。住所不定者は住宅扶助が適用されるようになったのみならず、地域生活を促進する支援が保護施設に導入された結果、被保護世帯向けの民間の住宅市場が発展してきました。そして、2002年にホームレス自立支援が導入され、2015年に被保護世帯の増加対策として生活困窮者自立支援に変わりました。本制度により各区役所に窓口が設置され、あいりん地区のような1ヶ所集中と違う構造になりました。支援空間は地域の経済的な条件によるもので、被保護世帯率は西成区をはじめに、東住吉区や生野区などの大阪市の南部にある低家賃の民間賃貸住宅が多いところに高い数字を示しました。
このようなホームレス支援の変換によって、支援の空間が政策に決定されたあいりん地区から市場に作り出された空間に変わってきました。そのプロセスの中で、あいりん総合センターの閉鎖は、あいりん政策の撤退の一環であるとともに、従来の日雇労働者の町にホテルなどによる再開発への道を開いたと言えるでしょう。
当日は教員が多数参加し、発表後にはアメリカなどの事例と比較しながら、活発なディスカションが行われました。
大学院人文社会科学研究科 ヨハネス キーナー 准教授
会場の様子
参考URL